あおぞら診療所 人材募集 

医師(常勤)

 あおぞら診療所の屋台骨となって活躍したいという気概のある医師は大歓迎です。臨床のみならず、当院のさまざまな活動にも深く関与することは他機関ではできない貴重な実践、経験になると思います。  

 もちろん、日本在宅医学会の在宅医療専門医を目指す医師や日本緩和医療学会の緩和医療専門医を目指す医師の研修も積極的に受け入れています。家庭医療に関心の深い医師や日本プライマリ・ケア連合学会の家庭医療後期研修を終えた医師、認知症や神経難病、精神疾患等の重要疾患について経験を深めたい医師、そして在宅医療をライフワークにしたい医師にとって、有意義な研修になるべく体制を整えていますのでご相談下さい。

 在宅医療機関は増えつつありますが、患者中心の医療ケアの実践、そして研修医をはじめとした数多くの教育研修にたずさわる機会、臨床実践から得た着想を研究に発展させるような活動を志向する機関として、あおぞら診療所は全国的に見てもまれな存在だと思います。

 

あおぞら診療所の臨床活動 「これまで」と「これから」

1)開設から現在までの在宅医療を中心とした臨床実践

診療所を開設するまで

 医学教育のあり方について議論を重ねていた仲間が集まり、当時私たちが主張した「患者さんのいのちと生活に責任を持ち続ける医師」である『主治医』を養成するために、地域医療のフィールドをその教育現場とするべきだという信念のもと、千葉県松戸市に診療所を開設したのが1999年でした。当時、複数医師による診療所開設は我が国ではほとんど前例がありませんでしたが、高齢化が確実に進展しつつあり、介護保険制度がスタート間近という時代背景であったことから、要介護者に対する在宅医療のニーズが増えていくことは十分予想できました。個人的にはそれまでがん診療を主たる仕事として臨床に従事してきたことから、終末期のがん患者さんを対象とする在宅緩和ケアに取り組みたいと考えました。いずれせよ24時間365日の対応が必要不可欠であることも想像がつきました。

在宅医療を診療の中心にすえての船出

 このような考えのもと、在宅医療を中心に取り組む複数医師体制の診療所としてあおぞら診療所はスタートを切りました。開設時よりどんなご依頼も断らず非選択的にお引き受けすることを基本方針としましたが、すぐにがん患者さんのみならず、あらゆる疾病の患者さんが困難を抱えていることに気づきました。開業前は基盤が確立した段階で外来診療を拡充していこうと考えていましたが、在宅医療のニーズは年々拡大していく一方になりました。また、当院が徐々に地域に根付いて行くにつれて、“選ばれた”特に困難な患者さんをご紹介いただくことが多くなっていきました。緩和ケア外来やグリーフケア外来に取り組んでいるとは言え、これまでの17年の間は在宅医療が当院にとって臨床活動の9割のウェイトを占める領域であり続けました。

Small is beautiful

 在宅医療においては、「地域が病棟」だという言い方をよく使います。患者さんの自宅が病院の病室で、地域の道路が病院の廊下だという意味です。ただし、決定的に異なるのが、病院は病床数が明確に規定されているけれども、在宅にはそれがないという点です。結果として、年々担当する患者さんの総数が増えてどんどん大規模化している在宅医療機関はあちこちに存在しています。
しかし、当院の考え方は異なります。そもそも地域医療を教育現場とするという理念に基づいて開設したのであり、一定期間にさまざまな患者さんを教育機関として経験できるためには一定の規模が必要になることは確かです。だたし、教育現場として機能するために診療の質を高い水準で維持することにこだわりたいと思っています。規模が大きくなることによって、診療の質にばらつきが生じてしまうことを避けるために、およそ200名程度の患者数で診療所の規模を維持するように、さまざま腐心し続けています。たとえば、居住系施設からすべての入居者を担当してほしいというお申し出は基本的にお断りしていますし、地域の開業医の先生方と良好な関係構築をすすめながら診診連携を推進するとともに、在宅医療に取り組むかかりつけ医を増やしていく努力を重ねています。

「研究」「教育」「連携」「政策」にまつわる諸活動

 2008年から2014年にかけて、地域緩和ケアに関する戦略研究OPTIMをはじめとした研究に関する活動、東京大学が柏市や柏市医師会と力を合わせて取り組んだ柏プロジェクトなど教育研修に関する活動、厚生労働省モデル事業としての在宅医療連携拠点事業など連携に関する活動、厚生労働省老健局の地域包括ケア研究会など政策に関する活動など、「研究」「教育」「連携」「政策」にまつわるさまざまな活動に取り組んできました。いずれも、本業である「臨床」に還元できる好循環を生み出すことを念頭に、小さくないエネルギーを投入してきたつもりです。

医師が在宅と病院の双方で診療する

 2014年度から、当院の医師が松戸市立の後方支援機能病院としての機能を担っている東松戸病院において、診療の一翼を担当するようになりました。この東松戸病院は、回復期リハビリテーション病棟、緩和ケア病棟、そして地域包括ケア病棟の3機能を有する病院です。もともと、当院が担当する患者さんについては、3次救急、2次救急、亜急性期入院医療の使い分けを極めて厳格に行っています。相応の理由がない限り、要介護者や終末期患者を3次救急病院である松戸市立病院に搬送することはありませんし、たとえば在宅患者に生じた肺炎の9割は在宅において治療を行っています。東松戸病院との緊密な連携体制が強化された2014年度以降は、亜急性期入院医療やレスパイト入院の必要が生じた場合には、東松戸病院においてできるだけ短期の間に過不足のない形での入院医療を遂行する関係性を整え、現在に至っています。

2)行政と医師会が取り組む「臨床」に資する諸活動

松戸市の在宅医療や介護連携を推進するための態勢づくり

 2014年度に川越が松戸市医師会理事に就任し、在宅ケア委員会を担当することになりました。この委員会には、もともと歯科医師会・薬剤師会の幹部が毎月の委員会に出席していましたが、2014年度からは松戸市の高齢者支援課と介護制度改革課にもご臨席いただけるようになりました。2015年度には、医師会が側方支援する形で松戸市訪問看護連絡協議会が立ち上がり、それ以後訪問看護と介護支援専門員の代表者も委員会に臨席する態勢が整いました。そのような枠組みの中で、在宅医療・介護連携推進事業をはじめとした在宅医療および医療介護連携にまつわる活動について20名以上の医師会員が委員となり、役割を分担する形で精力的に取り組んでいます。

松戸市行政と医師会が力を合わせて取り組む介護保険

 松戸市医師会の在宅ケア・介護保険担当理事に就任したのち、いくつかの経緯を経て、松戸市介護保険運営協議会、松戸市地域ケア会議、松戸市介護認定審査会の会長職を川越が担当することになりました。これらの会議体を建設的な討議が行われる場とするために、松戸市行政と綿密な準備を重ねる態勢や信頼関係を次第に整えました。その結果、松戸市の介護保険の運営や、地域課題の抽出とその解決策の検討、介護認定審査のあり方等について、さまざまな成果が生み出されるようになってきています。

地域サポート医が取り組むアウトリーチ

 松戸市では、15の日常生活圏域ごとに地域個別ケア会議を年間4回程度、いわゆる困難事例を取り上げる形で開催しています。市内全域で年間60回にわたり開催される個別ケア会議で検討された困難事例について、丁寧に分析しています。その結果、独居、認知症、地縁の欠如、医療連携上の困難、複雑な疾病の存在、医療や介護の利用拒否、虐待などの要素が複雑に絡み合う形で、困難と言われる事例が形成されていることがわかってきました。医療が関連することで解決困難な状態に陥っている事例も少なくないという実態も明らかになり、ひとたび困難事例が発生すると、地域包括支援センターの職員や市の保健師がその対応に長期間に渡り忙殺されてしまうこともわかりました。
 在宅医療・介護連携推進事業のタスクの1つに、在宅医療・介護連携相談窓口なるものが挙げられているわけですが、松戸市の場合、電話相談や対応機関の紹介なら日常臨床の一貫としてあおぞら診療所をはじめとした市内の医療機関がすでにそのような役割を果たしている実績がありました。むしろ、医療が関連していて対応困難に陥った事例に遭遇した地域包括支援センターの職員等が医師に相談できる機能が地域で求められていると総括されました。
 そこで、2016年度から地域包括支援センターごとに「地域サポート医」と称する医師を配置して、求めに応じて対象者のところへ訪問支援(アウトリーチ)して、大まかな見立てを行い、医学的見地からアドバイスを行うという態勢を、医師会として構築することにしました。今後、困難事例に対する経験を重ねていく中で、真の意味で地域に貢献する仕組みに育てていきたいと考えています。

松戸市医師会が取り組む健康啓発活動

 2012年から機能強化型(連携型)在宅療養支援診療所の要件である、月に一度のカンファレンスを継続開催してきた中で、医師会医師が市内の小中学校に健康に関する出前講座を行ってはどうかという議論が積み重ねられました。松戸市医師会理事会での討議も経て、2015年1月に「まちっこプロジェクト」(Matsuo Child to Community Project)に取り組む新たな委員会として健康啓発委員会が松戸市医師会に新設されました。現在、委員会は16名の医師会員により構成されており、市内の中学校や小学校において「いのちの尊さ」や「認知症」についての講義を分担しています。発足当初より、松戸市教育委員会が月に一度の委員会に臨席していただくとともに、学校現場との連絡調整など継続的な支援をいただいています。市民へのアンケート調査(介入前調査)の実施にあたっては、松戸市地域医療課に多大なご尽力をいただきました。「まちっこプロジェクト」では、健康啓発、リビングウィル、人と人とのつながりの強化、そしてかかりつけ医推奨という「4つのねらい」を基本コンセプトとしており、講義の最初と最後にこの4項目について強調する形をとっています。より多くの学校で実施できるように、今後年を追うごとに態勢を拡充していく方針です。

3)在宅医療の経験蓄積が地域における医療ケア実践の“武器”となる

困難事例の経験を通じた臨床能力の研鑽

 在宅医療のことを「患者に医療を在宅で施す営み」だと捉えるのはやや近視眼的です。そもそも、地域医療の本質とは、医療をきっかけに患者さんに関わることにはなるわけですが、診断や治療という狭義の医療の役割にとどまらず、対象者本人の生活や人生を踏まえて伴走すること、家族丸ごとを対象とすること、地域という脈絡で考えることによってその方の幸せを最大化することであり、入院、外来、在宅という臨床現場のどこであっても共通の目標だと思います。
 ここで、臨床能力を研鑽するためには困難事例の経験が必要不可欠だということを強調しておきたいと思います。いわゆる困難事例について経験を積み重ねていく過程において、生物心理社会的アプローチや家族志向型ケア、緩和ケアなどのプライマリケアの中核を成す臨床能力が必然的に鍛えられることになるからです。そう考えると、在宅という臨床フィールドは複雑な問題を抱えた困難な事例についての経験を豊富に積み重ねることができる臨床現場であると言えます。

地域ケアの現場で必然となった多職種協働や医療介護連携

 在宅医療連携拠点事業のモデル事業がはじまった2011年ころから、多職種協働や医療介護連携の重要性が叫ばれるようになりました。その後、多職種協働や医療介護連携をビルトインする形で「地域包括ケア」が厚生労働省の立案する政策において中心的な位置を占めるようになっていきました。冷静に考えると、たとえば急性期病院においては多職種連携とか、多職種協働を声高に叫ぶ必要性はさほどなく、今日でも医師を中心として医療が展開されていることでしょう。しかし、回復期リハビリテーション病棟や緩和ケア病棟ではかなり異なる病棟運営が行われており、チーム医療や多職種協働の重要性が深く認識されていることと思います。在宅医療も全く同じ脈絡で多職種協働が求められ、さらに医療と介護の連携の重要性が指摘されるようになりました。対象者が医療、介護、福祉、住まい、地域のつながりなど多様なニーズを有する時代なのですから、歴史的な必然だと言うことができるでしょう。

疾患の軌道学を踏まえた意思決定支援

 緩和ケア医Lynnが提唱した「3つの軌道」をきっかけとして、それぞれの疾患の軌道を踏まえた臨床対応の重要性が指摘されるようになりました。人のEnd of Lifeにおいて身体の状況がどのように変化し、最終的に死に至るのかについて、予測を立て、そこで必要となる適切なケアを提供することは、緩和ケアに従事する医療者にとって重要な姿勢だと思います。全く同様のことが在宅医療やリハビリテーションでも必要であり、この軌道概念は地域の医療やケアの現場に大きな示唆を与えてくれました。
 医療の高度化・専門分化の結果、患者さん自身が、今後自分がどんな経過をたどり、どんな苦痛や困難に遭遇することになり、どのように対処するべきなのかを見通すことは、極めて困難な時代となっています。だからこそ、患者さんに近しい立ち位置で、その生活に寄り添い、人生に伴走する医師や看護師は、その継続的な関わりを通じて患者さんの志向や人生観をも把握し、その後の人生の重大局面において、その方にふさわしい意思決定ができるように支援することが極めて重要です。病院が担う医療の役割との相違だと言えます。

困難事例の経験蓄積が地域における医療ケア実践の“武器”となる

 そもそも、医師の役割が降圧剤やインスリンの用量を調節する係であるはずがありませんし、訪問看護師は排泄ケアや注射の係ではありません。“患者さんの苦痛を最小化し幸せを最大化する”ことに貢献することが、地域における医療やケアに従事する医師や看護師の役割の本質だと考えると、ここまで述べてきた「生物心理社会的アプローチ」や「家族包括的ケア」、「緩和ケア」、「多職種協働」、「医療介護連携」、そして「軌道を踏まえた意思決定支援」などの素養を体得する必要があります。
 数多くの臨床経験を蓄積し、研鑽を重ねていくことが訓練過程となるわけですが、入院病棟では患者さんの生活を踏まえた医療を展開することは容易なことではありません。また、外来では生活を踏まえた医療を展開することは可能ですが、数多くの外来患者さんの中で「困難事例」に相当する方はその一部にとどまります。一方、高齢多死社会が進行しており、複数の困難を有する在宅患者さんは増加の一途をたどっていることから、在宅医療ではいわゆる「困難事例」を高頻度で経験することができます。さらに重要なのは、困難事例の経験蓄積を通じて前述のさまざまな素養を体得することによって、外来診療や入院病棟での診療の質も向上するという点です。医学という学問を用いて患者さんという存在を生物学的に分析し、対象となる疾病に対して医療を施すだけではなく、患者さんの人生に寄り添い、少しでも苦痛が少なく、幸せでいられることに貢献できる医療ケアを提供することこそ、地域医療の醍醐味だと考えます。

4)あおぞら診療所の臨床活動の「これから」

あおぞら診療所が取り組む「主治医チーム外来」

 要介護状態となって通院が難しくなった患者さんについて、「一次予防や二次予防の手立てが図れていれば・・・」と感じることも少なくありませんし、フレイルの状態にある方はその後の暮らし方のいかんによって数年後の運命が大きく異なることを在宅医や訪問看護師は日々痛感しています。そこで、これまで在宅医療を臨床実践の主たる活動としてきたあおぞら診療所は、今後外来診療への取り組みを強化していきます。私たちはこの取り組みを「主治医チーム外来」と名付けました。在宅医療で経験した数多くの蓄積をもとに体得した素養を、要支援レベルの方、フレイルの方、生活習慣病を有する方、そして健康な方に生かすことができるような外来診療実践のことです。
 「主治医チーム外来」に取り組むという動機は、「早期からの緩和ケア」というかけ声をかけただけでは何も変わらないという苦い経験に基づいて、在宅医療の対象になる前の患者さんに在宅医療のノウハウを提供することで、かかりつけ患者さんの平穏な生活の継続や生活の質維持向上に貢献したいと考えたところから発しています。

地域を耕す健康啓発活動やアウトリーチ

 すでにまちっこプロジェクトや地域サポート医が取り組むアウトリーチの活動内容については解説しました。いずれも、松戸市医師会の枠組みに基づいて実施しており、あおぞら診療所がその事務局機能を担当しています。「まちっこプロジェクト」をはじめとした健康啓発活動は、医療機関が行う通常の診療活動からさらに一歩進んで、健康な子どもたちや親世代の方々にも、健康をキーワードにして働きかけるための戦略と言えます。
 一方、在宅医療に取り組んでいると、引きこもりや医療機関を受診しない、または制度活用を拒否する傾向がある方が、地域に少なからず埋もれていることに気づかされます。これらを虐待やセルフネグレクトという用語でとらえるとごくまれで特殊なケースと誤解されかねないですが、明らかに適応があるにもかかわらず医療や介護のサービスを利用したがらない方や、ゴミ屋敷状態に陥っている方などを含めれば、かなりの数にのぼる方々がそのような状態に陥っていると言えます。このような「助けを求める力が欠如」している方全般を対象とする医師のアウトリーチが、地域に必要不可欠な臨床活動だと考え、取り組みを開始しました。

まとめ

 図をご覧下さい。人は一生の中で、健康な状態、生活習慣病や慢性疾患を有する状態、フレイルまたは要支援に相当する状態、要介護や終末期などEnd of Lifeの段階など、様々な状態を迎えるかもしれません。これまでの在宅医療実践で蓄積したノウハウを、フレイルや要支援の方、生活習慣病や慢性疾患を有する方に貢献する「主治医チーム外来」のスタイルを確立したいと考えています。さらに、健康な方に「まちっこプロジェクト」をはじめとした健康啓発にかかるさまざまな活動を行っていきたいと思っています。そして、「助けを求める力が欠如」している方には、地域サポート医が行うアウトリーチ活動を推進していきます。
 このように、あおぞら診療所は在宅医療を専門として在宅医療だけに取り組む医療機関ではありません。在宅医療から得たたくさんの経験蓄積に基づいて、在宅患者、外来患者、健康な方すべてを対象として、地域に暮らす方々のいのちと健康に責任を持ち続ける医師のあり方(私たちが『主治医』と定義した診療実践のことです)を追究したいと願っています。そして、医師会や市行政、市民と力を合わせて、老いても病んでも暮らしやすいまちづくりに取り組んでいきたいと思っています。そのような営みこそ「地域包括ケア」と呼びうる活動なのだと認識しています。

 

2018年度 常勤医師募集について

 2018年度常勤医師を募集します。当院における医師研修の概要については、第25回日本在宅医療学会学術集会シンポジウムでの講演スライドをご覧下さい。

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