診診連携 |
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松戸市の訪問診療を行う診療所では常勤医師が1人体制をとっていることが多く、個々で24時間体制をとるには心理的・肉体的負担は小さくありません。そこで、医師の負担を軽減しながら24時間体制を構築するため、当院では平成19年より、近隣の開業医と連携を開始し、現在はそれを拡大、当院を含む6診療所と機能強化型体制をとり、月1回の診診連携カンファレンスをもっています。
連携の仕方としては、事前には患者氏名、住所、電話番号のみを共有することで、カルテ共有や事前のサマリー作成等の負担や心理的抵抗をなくす形で連携を行なっています。主治医の休暇中や出張中であっても、患者さんからは基本的に主治医が一元的に連絡を受けます。そして主治医が臨時往診が必要と判断した場合に、連携医師に連絡して病歴や留意すべき点を直接伝えます。主治医が方針決定を行い、連携医師は主治医の指示を仰ぎながら患者に対応する形をとっています。
このようにあくまでも主治医が方針決定を行い、連携医師は主治医の指示を仰ぎながら患者に対応するという形をとることでスリムな診診連携を実施しています。
週刊『日本医事新報』No.4565 (平成23年10月22日)に掲載された研究報告をご紹介します。
各連携システムの構築にご活用下さい。
病診連携 |
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2011年4月より、在宅医療の後方支援機能を担う松戸市立福祉医療センター東松戸病院と2か月に1回のペースで、診療所と病院の両者の医師、医療ソーシャルワーカーが同席した「病診連携カンファレンス」を行うようになりました。その後、間もなくして国立がん研究センター東病院緩和医療科がカンファレンスに加わり、3つの医療機関でのがん患者の退院支援に関してより充実した連携ができるようになりました。
日頃から密な連携と適切な情報共有を行うことに加え、カンファレンスでは、医療処置等の多い患者さんが退院時に必要な社会資源に繋がり、スムーズに退院支援・在宅移行体制をとれるよう話し合いを行っています。
その連携体制をより拡大し、強化していくために、2014年9月に、松戸市立病院、松戸市立福祉医療センター東松戸病院、国立がん研究センター東病院の医師、退院調整看護師、ソーシャルワーカーと、市内で在宅医療に携わる8診療所の医師、看護師、ソーシャルワーカーの交流の場を設けました。これは、患者さんが病院での入院治療から在宅療養へ移行するにあたり、病院と診療所がより連携しやすい関係を深めることを目的としました。さらにその後、患者さんの入院治療や自宅での療養生活に関わった多職種が会して行う‘地域デスカンファレンス’の開催にまで発展しています。
平成23年8月より、松戸市立福祉医療センター東松戸病院、国立がん研究センター東病院緩和医療科、当院の3者で病診連携カンファレンスを行う中で、3者が一体となり患者さんやご家族を地域で支えるシステム“ホスピストライアングル”の構築を新たに取り組み始めました。「がん治療を行う専門病院」「地域の病院」「地域の診療所」の3か所が緊密に連携し、患者さんやご家族が3か所の医療機関のどこに相談しても、患者さんの状態に最適な医療機関で切れ目のない医療やケアを提供できるように対応することを目指すものです。
現在、ホスピストライアングルを説明した患者さん・ご家族向けのリーフレットを作成し、3つの医療機関にリーフレットを配置しています。
病院と在宅の連携に関して、病院側のスタッフから、入院患者さんが退院後にどのような生活を過ごしているのか分からない、知りたいといったお声を頂くことがあります。そこで平成24年1月から、病院から訪問診療の依頼を受けた患者さんの中でも、病院の退院支援に関わったスタッフが病状以外の面に不安要素を抱いていた患者さんを対象に「在宅療養移行報告書」の作成を開始しました。報告書は患者さんごとに在宅での療養生活を支えている多職種(医師・訪問看護師・ケアマネジャー・歯科衛生士・リハビリスタッフ等)に情報収集を行い、“現在の病状や治療方針”だけでなく、本人・家族に聞いた“療養生活上のエピソード”を交えた内容にしています。
在宅療養移行報告書を通して、病院の医師・看護師・医療ソーシャルワーカーに、患者さんの退院後の経過をフィードバックすることで、患者さんがどのような療養生活を送っているのかを伝えると同時に、今後、退院支援を行う際の参考にして頂くために、今後継続的に作成していく方針です。
平成19年に、「通院治療・在宅医療等、地域に根ざした医療システムの展開に関する研究」(平成19年度厚生労働科学研究費補助金)の一環として、「案ずるより任せるが吉 在宅医療」を監修致しました。
看護師連携 |
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平成24年10月18、19日に開催された、第17回日本看護サミット青森‘12 シンポジウム「地域でつなぐ看護 ~在宅医療の推進を担う看護職の役割~」に登壇しました。
分科会Ⅳ 地域でつなぐ看護
~在宅医療の推進を担う看護職の役割~
第17回日本看護サミット青森‘12 報告書より、シンポジウム「地域でつなぐ看護 ~在宅医療の推進を担う看護職の役割~」(p.146-151)
あおぞら診療所では平成13年より、患者さんの在宅療養生活をより充実したものにするため、5名以上の患者さんの支援を依頼している地域の訪問看護ステーションと、定期的にステーションカンファレンスを開催しています。
カンファレンスでは、訪問看護ステーションからは訪問回数や支援内容だけでなく、支援中の家族の様子や介護保険サービスに関すること等患者さんの療養生活に関する幅広い内容の報告が行われ、主治医からは最近の病状や直近の検査結果を伝え、診療所の医師とステーションの看護師との間で、病状だけでなく本人を取り巻く環境等に関しても共通認識を持てるようなカンファレンスを行っています。
地域の訪問看護ステーションと医師会の連携を強化することを目的に、松戸市医師会が主催して、平成27年2月に「松戸市訪問看護ステーション地域連携促進会議」を開催しました。この連携促進会議を経て、平成27年度には正式に松戸市訪問看護連絡協議会を設立し、協議会の設立に際しては松戸市医師会が事務局機能を担うなど側方支援するという方向で準備をすすめています。
歯科連携 |
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平成25年7月28日、全国在宅歯科医療・口腔ケア連絡会が主催する口腔ケア研究会(TABERU2013)に登壇しました。
平成23年度から在宅医療連携拠点事業の一環として行っている歯科連携活動の中から、大きな成果があった事例を紹介したスライドです。
在宅療養者では全身疾患の状態や疾患の進行に伴い、口腔内や嚥下機能にも問題を抱える方が多く存在しますが、十分な対応がなされているとは言い難い状況です。
あおぞら診療所では、平成23年4月から医師の訪問診療に歯科衛生士や歯科医師が同行する形で口腔内および摂食嚥下に関してスクリーニングを開始し、現在も歯科衛生士によるアセスメントを継続しています。
平成28年5月末までに延べ570名についてアセスメントを行い、そのうち198名に対して新たに歯科診療や継続した口腔ケア(口腔清掃、口腔内・口腔周囲マッサージ、摂食・嚥下リハビリテーション等)を開始し、アセスメント前から訪問歯科診療を受けていた方102名と合わせ、300名(52.6%)の方に訪問で歯科がかかわるに至っています。
歯科診療や継続した口腔ケア、嚥下検査の必要な場合には、医師よりご本人ご家族にその旨を説明し、適した治療・ケアの提供と訪問が可能な地域の歯科医師につなげています。
課題1 | 口腔内に問題があるのに気付かれていない |
対応 |
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課題2 | 訪問診療に積極的に従事する歯科医師や歯科衛生士が不足している |
対応 |
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課題3 | 摂食・嚥下障害に対して対応できる専門職が少ない |
対応 |
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課題4 | 口腔、摂食嚥下機能に問題を抱えているが、歯科介入の困難な患者も多い |
対応 |
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全身疾患の状態や進行に伴い口腔内や嚥下機能に問題を持っている在宅患者が多い中、看護師と歯科衛生士が同行して口腔ケアを行う場合もあります。看護師と歯科衛生が協働することによって口腔ケアの方法が難しい場合でも適切なケアが施せるなど、看護師のケアの質、手技の向上が見られ、口腔に対する意識も高まっています。当院が行っている看護師・歯科衛生士が協働で行っている口腔ケアの実践と今後の協働のあり方について日本在宅医学会で報告をしました。
薬局連携 |
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当院では、1999年の開設以来、地域の薬局・薬剤師のみなさまと連携協働する形をとってきました。そうした活動を続ける中、平成23年度より厚生労働省の在宅医療連携拠点事業を受託し、その活動の一環として、地域における薬局との連携強化を目指す取り組みに注力する運びとなりました。
活動を始めるにあたり、松戸市内にある188の保険薬局(平成23年4月時点)に呼びかけ、「在宅医療連携薬局連絡会(以下、連絡会と略)」を立ち上げました。その後、連絡会会員薬局の薬剤師8名が世話人となり、宅医医療で薬剤師が果たす役割や連絡会で検討すべき活動について、会員の意見を集約しながら、具体的方向性を示し、成果を上げてきました。
高齢者、とりわけ認知症の方は患者さんの理解による内服遵守に問題を抱えていることが少なくありません。また、同時に複数の疾患を合併している場合が多く、一つの病態に対して複数の薬剤を併用していたり、頻回に薬剤の変更を要することが少なからずあります。居住系施設の入居者の大半は認知機能障害を有していますが、グループホームには看護師が配置されていないことから服薬管理を介護職員が担当している場合が多く、服薬にまつわる困難や薬に関する様々なリスクが存在していると言えます。
そこで、医師の訪問診療に薬剤師が立ち会い、患者さんの処方に関する情報や薬歴の把握、個別性に合わせた剤型・用法・用量の調整やトラブルへの対応、患者・家族・介護職員への薬に関する様々な指導、主治医への提案などを行っています。
ここでは、当院が実践している薬剤師がグループホームに提供する包括的な薬剤管理の内容とその意義について(平成26年3月に浜松で行われた日本在宅医学会にて報告)紹介します。
*黒木 多美子氏(松戸薬局松戸新田店)の許可を得て、学会報告(ポスター)の内容を掲載しております。
ケアマネジャー連携 |
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あおぞら診療所では平成23年度に、在宅医療連携拠点事業(厚生労働省のモデル事業)を受託したことを契機に、松戸市のケアマネジャーを対象とした「在宅医療連携ケアマネジャー連絡会(以下、連絡会と略)」を立ち上げました。
連絡会では、1)介護と医療の連携を図る上での課題を明らかにし改善と充実を図ること、2)在宅医療におけるケアマネジャーの本質的な役割の充実を目指し必要な検討を行うことを目的に活動を行いました。具体的には、平成23年度から24年度の2年間に、以下の3つのテーマに取組みました。
連絡会の取組みは、松戸市介護支援専門員協議会へ引き継がれ、松戸市の支援も受ける形をとることで、より公的な組織へと発展しました。
在宅医療連携ケアマネジャー連絡会(以下、連絡会と略)では、利用者の希望をふまえ、かつ公平・平等な視点からケアプランを作成するためのツールの一つとして、デイサービスに関する“口コミ情報”を集約する形で『ケアプラン作成最強支援ツール ~デイサービス編~』という名称の冊子を制作・発行しました。この冊子には、ケアプラン立案にあたり有益な情報にも関わらず、個々人の努力に依拠していた、おやつ代等自己負担額や宿泊サービスの有無、対応可能な医療に関する情報が盛り込まれています。
冊子の制作に当たっては、連絡会の担当世話人が中心となり、松戸市内にある103の通所介護事業所(2012年6月時点)に対してメールとFAXでアンケート調査を行い、そのうち94箇所(91.3%)から回答を得ました。完成した冊子については、市内の居宅介護支援事業所105箇所と通所介護事業所103箇所に配布しました。冊子の概要につきましては、下記リンクからご覧下さい。
あおぞら診療所では、在宅療養支援診療所とケアマネジャー間の「顔の見える関係づくり」を構築することを目的に『集中ケア担当者会議(合同カンファレンス)』と称する会議を平成19年11月より2~3か月に1回のペースで開催しております(平成24年1月~12月では10回開催)。
カンファレンス開催時には、1~3名の医師が診療所内に待機する体制をとり、カンファレンスのために3時間を確保しています(患者一人当たり30分がめやす)。看護師・ソーシャルワーカーが主治医ごとに6~8名の対象患者を選定し、それぞれの担当ケアマネジャーに参加を呼びかけてスケジュールの調整を行っています。
カンファレンスの進行方法は、初めにケアマネジャーが把握している療養生活の実際やサービス提供上の問題点を中心に共有してもらい、主治医からは病態や治療方針についての解説・介護サービス利用に関して医学的見地からのアドバイス等を行っています。また必要に応じて、ホームヘルプやデイサービス・訪問入浴等の各介護サービス事業所にもケアマネジャーから呼びかけていただき、必要似応じて参加を得ています。
集中ケア担当者会議(合同カンファレンス)に参加したケアマネジャーからは、「医師と顔の見える関係ができた」ことだけでなく、「新しい視点でケアプランを考えるきっかけになった」という感想を頂いています。また、この集中ケア担当者会議(合同カンファレンス)は、診療所のスタッフにとっても訪問診療だけでは見えてこない日々の生活の実際や療養上の問題点をケアマネジャーから知ることができることが大きなメリットであると言えます。
介護職連携 |
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医療と介護の連携を図り、患者さんにとってより良いケアを提供する上では、患者さんに直接ケアを行う介護職の果たす役割は大きいといえます。そして実際に施設で介護する際には、食事や排せつ、睡眠の注意点、患者さんの体調変化に関する報告や相談の仕方など、「医療と介護」に関する事柄で戸惑うことも少なくないかと思います。
そこであおぞら診療所では、厚生労働科学研究 地域医療基盤開発推進研究事業(平成24年~26年の3年間の事業)の一環として、平成24年度より松戸市内の介護職を対象とした終末期ケア研修会のプログラム開発並びにその運営を行ってきました。本研修会は、一方向の講義にとどまらず、グループワークも交えることで、事業所の枠を超えた関係性構築を促す形を基本としております。
平成24年度はケアマネジャーや介護職を主対象として、医療と介護の連携を深めるための基礎知識をテーマとした一日講習会(92名が受講)を開催しました。平成25年度は、地域での看取りの重要性を考え、居住系施設の介護職を対象に2回連続出席を基本とした研修会(41名が受講)を実施しました。1回目の研修会では、終末期ケアや看取りを日常生活を支えるケアの延長線上にあるものとして捉えることに重きをおきました。日常業務に戻り約3か月の間に受講者各自が看取りについての振り返りを行い、2回目の研修会でそれらを講師や受講者どうしで共有しました。平成26年度は居住系施設の管理者や介護職を対象として、入居から看取りまでを継続的に支えるケアのための研修会(43名が受講)を開催しました。
これらの研修会をとおして得られた知見をもとに、介護職を対象とした終末期ケア研修会のあり方を再検討致しました。そうして、介護職が看取りを見据えたケアを提供する上で重要となる「基礎知識」と「チームビルディング」という二つのテーマを軸に据え、それぞれに応じた研修会プログラムを構築しました。
居住系施設管理者や職員を対象とした終末期ケア研修会
~入居から看取りまでを支えるケア~(平成26年度)
プログラム アンケート アンケート結果
介護職のための終末期ケア研修会(平成25年度)
第1回 9月10日 プログラム アンケート アンケート結果
第2回 12月12日 プログラム アンケート アンケート結果
医療と介護の連携を深めるための基礎知識講習会(平成24年度) | ||
プログラム | 講義用スライド 一部抜粋 | |
アンケート(ファシリテーター) | アンケート(民生員) | アンケート(参加者) |
医療と介護の連携を深めるための研修会(介護職を対象)開催のためのハンドブック並びに講義用スライドを開発致しました。
「基礎知識編」と「チームビルディング編」―というテーマ別となっております。是非ご活用下さい。
医療介護資源 |
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在宅医療連携拠点事業としての活動を地域で展開していくにあたっては、当該地域に在宅医療を支えるどのような医療や介護の資源があるのかについて量的に把握することが第一歩となります。それぞれのパフォーマンスがどのような状況にあるのかという質的な情報も把握できればさらに強力な武器となるでしょう。在宅医療に関するさまざまな相談に応じることも在宅医療連携拠点の重要な役割の一つですので、地域内のどの機関でどのような医療や介護を受けることができるかという現実的かつ具体的なアドバイスが期待されます。
次に、全国平均や近隣他地域と自地域の医療介護提供体制や高齢化率、在宅看取り率等がどのように異なっているのかを比較することによって、自地域の強みや弱みを明瞭に認識することができます。このような「在宅医療を支える地域の資源」に関する情報を明らかにすることは、自地域の医療介護資源の質や量を最適化するためにどのような活動を展開するべきかの優れた道しるべとなるでしょう。なお、全国や他地域の統計データに関しては厚労省や都道府県に問い合わせれば入手可能です。
日本医事新報で担当している連載「在宅医療 はじめの一歩」の原稿を参考資料としてお示しします。
これまでに当院が地域の専門職の皆さまと共に行った、医療・介護資源に関する調査結果の概要も紹介させていただきます。尚、各調査の詳細については、下記にお示しします関連ページをご参照下さい。
在宅医療はじめの一歩~在宅医療を支える地域の資源~
松戸市内訪問看護ステーション最優先対応エリアマップ
*看護師連携の項目もご参照下さい。
ケアマネタイム(一覧表)
*ケアマネジャー連携の項目、並びに松戸市医師会ホームページもご参照下さい。
ケアプラン作成最強支援ツール ~デイサービス編(小冊子)>>
*ケアマネジャー連携の項目もご参照下さい。
特養およびショートステイ医療行為対応・医療体制アンケート結果
*松戸市医師会ホームページもご参照下さい。